可哀想なラシャ切はさみ

このラシャ切鋏に出会ったのは4,5年前でした。何丁か研ぎ直しをお預かりした鋏の中の一丁です。刃は二枚とも外側に曲がって開いて、ハンドルは潰れて指が入る状態ではなく、刃こぼれも大きく二箇所ほどありました。
どうしてこんなになったかは、お聞きできませんでしたが、通常使っている間でなった状態ではありません。考えられるのは、機械に挟まれたか、誤って踏んづけたか、色々考えられますが日常あまり優しく扱われていなかったのではないかと想像できます。
いつも硬いものを切っているのか、ネジも大分ガタがありますが、それにしてもひどい状態です。





早速、研ぎ直しをする前に、形状の修正に取り掛かりました。幸い鋏の物は良いものでしたので修正が出来ますが、これが大変でした。まず刃の部分の修正で、刃を直線やや内曲がりに直します。槌を使うと折れてしまいますので、万力に挟んで少しずつ少しずつ曲げながら直します。
次はハンドルの修正です。大きな金床の上で今度は槌で折らない程度に少しずつ叩いて修正します。丸いところを元の丸い形に戻すのは大変です。
二つの部分がそれぞれ整ったら、今度は仮にネジでとめてみて合わせ具合を調整してゆきます。なかなか合いません。ねじれ具合も鋏には必要なのです。
やっと形が整って研ぎなおして納めましたが、画像の鋏はまたその後、歪んでしまったものが、帰ってきました。アア・・・。